石川県と漆器

三つの漆器産地


左手の親指を曲げた形の石川県には 三つの地域に漆器の伝統技術が受け継がれていますてい


経済産業大臣指定伝統的工芸品認定

1975年 

輪島

輪島塗 本堅地 丸盆 沈金飛花

輪島塗 本堅地 丸盆 沈金飛花

漆器製品の中でも 最高級品とされる 輪島塗.

木地に 漆で麻や寒冷紗などの布を貼り、下地には 輪島地の粉(珪藻土の粉末)を 漆・米糊に混ぜたものを使用し 塗りと研ぎを繰り返し ”本堅地漆器”と評される 輪島塗が誕生します。

堅牢な下地技術が確立され、能登の工芸として知られるようになったのは 江戸時代に入ってからのことで その時代の文献に記載されています。生産体制が整ったのは 江戸時代 中期から後期で、塗師の数も増え 生産組織も 塗師・椀木地師・曲物木地師・指物木地師・蒔絵師・沈金師の六職の分業化が進みました。これは 今も専門職が仕事を続ける輪島の特色となっています。

もともと 塗りの職人が多く "塗”が基本の輪島塗ですが 明治に入り 尾張から来た

蒔絵師 飯田善七のもとで 多くの蒔絵師が生まれ 明治時代中期から大正時代には 

沈金や蒔絵を施した 豪華な加飾の作品が つくられました。 


経済産業大臣指定伝統的工芸品認定

1980年 

金沢

加賀蒔絵 四季の花丸蒔絵 横笛 香合

加賀蒔絵 四季の花丸蒔絵 横笛 香合

加賀蒔絵として有名な金沢漆器は、1630年頃、加賀藩3代藩主前田利常が美術工芸の振興に力を入れ、 桃山文化を代表する高台寺蒔絵の巨匠五十嵐道甫を細工所の指導者として招き、技法を伝えたことが始まりです。
以後、五十嵐家一門は、歴代藩主に仕えるとともに技術を受け継いできました。また、道甫の門人といわれる清水九兵衛や印寵蒔絵の名工椎原市太夫が江戸から招かれ、加賀蒔絵の基礎がつくられました。 このように、王朝文化からの伝統を受け継ぎ、藩によって育成された金沢漆器は優美な貴族文化に武家文化が加わった特色があります。

室内調度品、茶道具などの一品制作が特徴です。指物、挽物、曲物などで造った木地素材に、下塗だけでも布着せ、漆下地など数十工程を経る本堅地塗、上塗は無地呂色[ろいろ]磨きや花塗仕上げが主で、塗立てや金沢独特の紗の目塗など高雅な変わり塗があります。
蒔絵は平蒔絵・高蒔絵・研出蒔絵・肉合研出蒔絵など高度な熟練を要する繊細な技法を用い、これに螺鈿[らでん]・平文[ひょうもん]・卵殻[らんかく]などの技法も使われ加飾効果を高めています。

 


経済産業大臣指定伝統的工芸品認定

1975年 

山中

山中塗  万葉汁椀

山中塗 万葉汁椀

16世紀の後半にろくろ師が真砂[まなご]の村(現在の山中温泉上流)に移り住んだことが始まりとされ、後に、木地師たちは下流の山中温泉の地に定住するようになったが、当時は白木地のままの挽物で湯治客相手の土産物とされていました。
江戸時代半ば(18世紀中頃)には、京都などから漆塗りの技法を学んで栗色塗が始まり 後に、朱溜塗と呼ばれ、山中漆器の特色となります。また、全国より塗師や蒔絵師を招き、きゅう漆や蒔絵の技術をとりいれました。
江戸時代の末には、木地挽きの名手である蓑屋平兵衛が千筋挽などを考案し、明治の初期には、筑城良太郎が毛筋や稲穂筋などを創案して挽物の技が確立しました。

木地の肌に極細の筋を入れる加飾挽きは、山中漆器が最も得意とするもので、 その手法は千筋をはじめ糸目筋、ろくろ目筋、稲穂筋、平溝筋、柄筋、ビリ筋など数十種に及びます。この時使われる各種小刀やカンナはすべて木地師の自作であり、作業に応じて使いわけられます。
筋挽きによって加飾されたものは、摺漆[ふきうるし]という木地に漆をしみ込ませて仕上げる方法により、木目をきわだたせ使い込むほどに味わい深い色合いになります。また、挽目をあらわした挽物の上に渦のような赤、黄、黒の漆で塗り分けた独楽塗りの技法も特色の一つです。 木地は堅く、狂いのないケヤキやトチ、水目桜を使い、樅木取りと呼ばれる独特の方法で、立木を自然な方向に木取りするため、歪みが生じにくく、堅牢な造りとなっています。